「伝える力」を、もう一度。元新聞記者・梶原遊さんが語る“書く仕事”の再出発

経歴

仕事内容

2011年に毎日新聞社に入社して、岐阜支局で4年、名古屋の中部報道センターで4年働いた後にプロバスケットチームの広報スタッフへ転職しました。
その後、チョコレートブランドの工場で出荷の仕事をしていましたが退職し、資格試験(社会保険労務士)をめざして勉強を始めました。転職してみて、自分は大きな企業に守ってもらっていたんだなと実感し、労務や年金を専門にしてみようと思ったのがきっかけです。
しかし、現実は甘くはなく、社労士の試験の合格率は平均6%程度。4回受験しましたが合格にはたどり着けませんでした。24年夏に、4回目の試験の自己採点が終わり、今年もダメだ…と抜け殻のようになっていたところに、毎日新聞時代の先輩から着信が(プライベートの携帯番号をお伝えしていた方でした!)。
「かじー、中部(名古屋)で記者が足りてないらしいねん…アルバイトせえへん?」 と言っていただき、人生二度目の毎日新聞の面接を受けました(笑)。1年の契約期間でしたが、一度辞める前よりも、はるかに充実した日々でした。

記者を志した理由

学生時代に中学、高校、大学と異なる種目のスポーツ(バスケット、ラグビー、アメフト)をしていました。
Numberなどのスポーツ雑誌を読み、自分もこんな記事を書いてみたいなあと思ったのが、記者を志した最初のきっかけです。
幸せなことに、2017年から2シーズン、プロ野球・中日ドラゴンズの担当(いわゆる番記者)をさせていただくことができました。松坂大輔投手の復活勝利に、記者として取材で立ち会えたのは、今でも思い出深い出来事です。


独立のきっかけ・活動内容

単純に、フリーター→記者アルバイト、という流れの中でアルバイトの契約が満了し、もう一度記事を書く仕事がしたいという気持ちが生まれたことがひとつ。
そして、二度目の記者経験の中で、広報やPRのプロデュースをされている方々との出会いがありました。
いろいろな情報提供や取材にご協力いただく中で、自分も広報やPRの仕事に挑戦してみたいと思うようになりました。
フリーランスでやっていくためにまだまだ勉強することだらけですが、記事を書く、写真を撮る、正確に発信するといった、記者として培ったものを活かしたいです。


MUSEとの関わり・参加のきっかけ

REAMの高橋麻菜美さんに今後のキャリアについてご相談させてもらったときに、おしごとMUSE EXPOの広報パンフレットの記事執筆をご依頼いただきました。
ブースに出展される方の横顔を、リモートでお話をお聴きしてひとつの原稿に仕上げていきました。
福島県相馬市で終活コンサルタントを立ち上げられる岡田雪絵さんは、ご出身が宮城県で、お母さまのご実家が相馬市ということで、東日本大震災でご家族が大変な思いをされたと伺いました。
岡田さんご自身は、栃木県でスーパーに勤務されたのちに福島へ移られ、ゼロから葬儀業者として経験を積まれたとのこと。
お話を聴いていて、起業への思いをしっかり文字に乗せたいと感じました。


女性起業家を応援する理由

女性だからこそ経験するライフステージ(出産、育児、主婦としての悩みなど)の中での出来事は、「あるある!うちもそう!」と共感する方がたくさんおられると思います。
女性の起業家さんたちは、その「共感の種子」を大事にしつつ、悩みや閉塞感を抱いている方の道しるべになるような存在だと思います。
「この起業家さんは私と同じ葛藤を抱えながら、これだけの仕事をされているんだ。私もできるかな」と感じ、トライされる方が、今回のイベントで生まれたらとてもうれしいです。

女性が活躍する社会をもっと普遍的なものにしていくには、私たち男性のマインドセットを変えていくことも重要だと思います。
もちろん女性起業家の方々の働きかけは不可欠です。それと同時に、男性がその現場の熱量を感じ取って、さらに別の男性に伝えていくという動きは必要だと思います。


取材者としての視点

取材する上での、自分流の考え方は「最強の部外者であること」です。
原点にあるのは、記者6年目だった2016年に、東邦高校(愛知)が春夏連続甲子園出場を果たした時のことです。
高校野球の取材は、甲子園での大会だけでなく、出場校の普段の放課後の練習、学校行事や合宿など、野球部員と過ごす時間が必然的に長くなります。
当然ながら「情」のようなものも徐々に湧いてきます。
甲子園で劇的な勝ち方、負け方をした高校の担当記者が、試合後の囲み取材で泣きじゃくっているのをときどき目にします。
しかし、それは取材するスタンスとして違うと私は思っています。決してすかしているわけではなく、事実を伝える側はそうあるべきではないのです。
感情と魂は、原稿に込めるものです。間違っても当事者にぶちまけるものではないです。

感情が揺らぐと、取材対象の像がぼやけます。
像がぼやけると、原稿が支離滅裂になりがちです。
そうなると、お金を払って、あるいは時間を割いて記事を読んでくれている人たちに、伝えるべきことが伝わりません。


今後について

偉そうなことを書きましたが、私自身はまだフリーランスになったばかりのピヨピヨ星人です。
それでも、今回このようなお役目をいただくことができ、これまでの取材でのご縁とご厚意にあらためて感謝申し上げます。

取材を通じて、自分なりの視点で見えてきた取材対象の姿に、問題意識や普遍性を投影しながら記事を完成させていくことのやりがいを感じています。
記事を書くお仕事、そしてPR・広報をプロデュースしていくお仕事の両方を軸として、任せてよかったと思っていただけるような存在になりたいと思っています。

女性起業家の皆様、「こんな仕事がしたい!」と思ったときの〝初期衝動〟を、一緒に昇華させていきましょう!